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長く生き続ける家とは

家は人が住まなくなると死んでしまいます。
空家の家がどんどん朽ちていく様は、だれしも見たことがあると思います。
家と人とは一心同体です。
人は家によって雨風から守られ、安心して休める場所を与えられます。
逆に家も人に住んでもらうことで、通風を得て、腐朽菌や害虫から守ってもらっています。
ただ、一生の内には様々な事情によって、その家に住み続けられないことも出てきます。
廻りを見まわしてみても、親子代々、
同じ家に住み続けている人はそれ程多くはいません。
サン工房で造っている家は、きちんとメンテナンスを施せば、
70年~100年、むしろそれ以上長く住むことが出来ます。
親子3代、4代と住み続けていけるのです。
ただ、子供が成長して親元を離れ、やがて元の家に帰ってきて住み続ける。
その子もまた、同じく住み続ける。

そんなサイクルが残念ながら今の日本の社会では、
様々な社会状況から現実的に成立し得ていません。
人が住まなくなった家は、多くの場合取り壊され、
更地にされ、また新しい家が造られます。
自分の理想の形を追い求め、マイホームの実現という浪漫を描く。
家のつくり手としては、これらの欲求に全力を上げても、
30年後この家は無くなってしまうんだろうか、と思うと、
多少ながら虚無感を感じてしまいます。

例えば、親から子へ家が受け継がれなくても、ある家族から、
また別の家族へと受け継がれる。そんな家は造れないだろうか?
古伊万里とかなんとか、今でも大事にされる骨董品と呼ばれる陶器があります。
200年前、300年前のものでも、全然現役で食卓に並んでいます。
(・・・金額を考えると実際に食器でつかうには勿体ないですが、
使おうと思えば全然使えます。)
あれだって最初はどっかの家族の食卓に並んでいた、ただの食器です。
それが、その器自体に魅力があるから、次の家族、
またその次の家族への受け継がれていくのだと思います。
例え、その家の子が興味が無くても、他にその価値を分かってくれる人がいれば、
譲渡され、売買されてその器は生き続けます。
このサイクルは家にも転用できると思います。
とにかく魅力のある家。通りすがりの人にも
こんな家に住んでみたいと思ってもらえる家。
時の流れに負けないデザイン。
古くても味があり、魅力があり、人の住みたい欲求を刺激し続ける家。
そんな家ができれば、その家は人は変われど、
ずっと愛され、住まわれ、生き続けていけると思うのです。
1件でも多く、そんな家を残していけたら、
家のつくり手としてこれほど嬉しいことはありません。
特定の好みへの提案ではなく、普遍的な魅力を持つ家を目指して、
これからも頑張ります。

大西等

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by sankoubou | 2014-03-30 10:18 | つくる

設計者の想いと会話をつづりました


by sankoubou